2026.3.21
感情を動かすのは「センス」ではなく「構造」だ|ログ!(札幌・長期インターン)

1. はじめに:「赤い三角形」から考える絵の構造について
真っ白な画面の中にポツンと置かれた「赤い三角形」を想像してみてください。
それだけを見れば、ただの幾何学的な図形に過ぎません。しかし、もしそれが「海」を描いた絵の中にあり、すぐそばに小さな人間が泳いでいたとしたらどうでしょう? 途端にその三角形は、鋭い歯を持つ「サメの背びれ」に見え、私たちは得体の知れない恐怖を感じ始めます。一方で、それが穏やかな波間に浮かぶボートの上にあれば「鮮やかなヨットの帆」に見え、どこか高揚感のある風景に変わります。
「絵を見る」という行為は、単に視覚情報を処理しているだけではありません。私たちは無意識のうちに、形や色、そしてその「配置」から、生存本能に根ざした強烈な感情を読み取っています。
今回読んだ課題図書、モリー・バング(Molly Bang)著、「絵には何が描かれているか:絵本から学ぶイメージとデザインの基本原則」(訳:細谷由依子由依, フィルムアート社)は、その直感の裏側に隠された「確かな構造」を鮮やかに解き明かしてくれました。この記事では、株式会社LANTERNインターン生の堀川春樹が本書から学んだ、表現者として知っておくべき「視覚のルール」とその活用について整理していきます。
2. 学びの要約:平面という「制約」を乗りこなすための技術
私たちが普段目にしている世界は三次元ですが、デザインや写真、SNSの画像はすべて二次元の「平面」です。この当たり前の事実こそが、表現における最大の壁となります。
本書を通じて私が得た学びは、「絵やデザインは現実の延長線上にありながら、平面という制約があるため、表現したいものを落とし込むには相応の『翻訳技術』が必要である」ということです。
伝えたいメッセージや感情がどれほど熱いものであっても、それに適した「構造」を熟知していなければ、その想いは読者に届く前にこぼれ落ちてしまいます。構造とは、いわば感情を運ぶための「器」です。感性だけに頼るのではなく、人間が本能的に反応してしまう「視覚のルール」を技術として使いこなすこと。これこそが、受け手の心を動かすための最短距離なのです。
3. 私の発見:視界を大きく変えた「2つの衝撃」
本書で提示された12個の原則の中でも、特に私の価値観を揺さぶった発見が2つあります。
① 画面の「上下」が支配する、精神と重力のせめぎあい
私たちは無意識に、絵の上半分を「自由、幸福、精神性」の領域として捉え、下半分を「重圧、悲しみ、あるいは安定」の領域として捉えています。
上部に配置されたもの: 天に向かって伸びるような開放感や、手が届かない精神的な高潔さを感じさせます。
下部に配置されたもの: 重力に従い、地に足がついた安心感を与える一方で、配置次第では「抑圧された重苦しさ」を演出します。
「どこに置くか」という選択ひとつで、被写体の社会的地位や心の機微まで語れてしまう。この事実は、構図を考える上での強力な武器になると感じました。
② 「形」よりも「色」で、脳は情報をグループ化する
もう一つの驚きは、人間は同じ「形」の類似性よりも、同じ「色」の類似性をより強く関連付けるという点です。 どれだけ複雑な幾何学模様が並んでいても、同じ色が使われていれば、脳はそれを「一つのグループ」として瞬時に認識します。デザインにおいて「色」がいかに強力なナビゲーターであるか、そして情報の優先順位をつける際にまず「色」をコントロールすべき理由が、この法則によって明確になりました。
4. 現場での活かし方:SNS運用を言語化する
この学びは、日々のフィード投稿やリール動画の制作において、具体的な設計指針として活用できます。これまでは直感に頼っていた部分を、言語化された戦略として落とし込むことができるからです。
フィード投稿のレイアウト: 例えば、ブランドの信頼感や落ち着きを伝えたい投稿では、あえて要素を画面の下半分に寄せて配置し、どっしりとした安定感を出してみる。逆に、新しい企画の告知など、ユーザーのワクワク感を煽りたいときには、メインの要素を上半分に配置して、軽やかさや勢いを出してみる。配置一つで、投稿の「トーン」をコントロールできるようになります。
写真・動画撮影の構図: リール動画などでも、背景に「とがった形」を映り込ませることで適度な緊張感を作り、視聴者のスクロールする指を止めたり、逆に親しみやすさを出したいシーンでは、丸みのある曲線が目立つ構図を意識したりと、視覚的な演出の幅が広がります。
余白(空間)の工夫: また、要素を詰め込みすぎず、形と形の間の「空間」を意識することも重要です。この余白が、情報の受け取りやすさや、動画全体のテンポを決めるという意識を持つだけで、これまで以上に「伝えたいことが、迷わず伝わる」発信ができるはずです。
5. おわりに:構造を知ることは、読者への「優しさ」である
構造を学ぶことは、決して表現を型に嵌めることではありません。むしろ、独りよがりな表現を卒業し、「どうすれば相手に正しく感情が伝わるか」を徹底的に考える、読者への「優しさ」なのだと感じました。
本書が教えてくれたのは、単なる絵のテクニックではなく、私たちが世界を「どう見ているか」という視覚の理解そのものでした。明日からの発信では、一つひとつの形や色に「なぜそこに置くのか」という意図を込め、より深い共感を生む表現を追求していきたいと思います。

私たちLANTERNは、札幌を拠点に活動する次世代型ビジネスデザインファームです。AI活用、Webマーケティング、デザインなど、デジタル領域の実務直結スキルを実践型で学べる総合実務学生インターンを運営しています。
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